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​幸福とマインドフルネス

コロナ禍でとても注目されているオンライン・コースがあります。
「The Science of Wellbeing」というCourseraの授業です。ビル・ゲイツさんは、コロナにより戦時中のような勢いでテクノロジーが進歩していると言っていますが、それを差し引いても、このコースの注目度は抜きん出ています。ニューヨーク・タイムズによると、2018年から330万人がこの授業を受け、コロナになってからは以前の8倍だそうです。教師はLaurie Santosさんというイェール大学の心理学者で、大学300年の歴史の中でも最も人気の授業とされています。コロナという特異な苦境下で、人々が幸せを求めていることがうかがえます。

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一方、World Happiness Reportが2021年の報告を出しました。幸福度の世界的統計です。コロナによる幸福への影響が今回の中心テーマです。結果を簡単にまとめますと、

1。ネガティブな気持ちは10%増えたが、ポジティブは減っていない
2。幸福度は、ロックダウンなどで一時的に低下するが、速やかに回復・維持されている
3。信頼、親切が一番幸せの助けになる
4。これはレジリエンスの証明だ

レジリエンス、つまり私たちには、ストレス状況でも持ちこたえる力があることを示しているとのことです。3についてもう少し説明すると、信頼・親切は「財布を落とした時、警察が届けてくれる、あるいは知らない人が届けてくれる」と思えるか、ということで測られました。社会への信頼感、安心感が、収入が何倍に増えるよりも幸せにつながるようです。また、失職、健康問題、犯罪といった幸せを妨げる負の力にも勝るものでした。この報告書が触れている香港の研究では、コロナ禍で人助けの行動(寄付)が、自分がお金をもらうよりも、ポジティブな感情、共感、つながり感を高めるとしています。ソーシャルサポートと呼ばれる人の支え合いが、危機下においてことさら幸福度をあげるようです

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親切、人助け、などと聞くと、マインドフルネスとのつながりを想像する方も多いかと思いますが、昨今、幸せの方程式には、必ずと言っていいほどマインドフルネスの実践が入っています。現に、Santosさんのコースでも、多分にマインドフルネスを推奨しています。マインドフルネスを5分行うと、人助けの行動が促進されたというUCLAの報告もあります。コロナ禍で人々のこころをマインドフルネスが救ったという報告もいくつかあります。イタリアのピサ大学による6000人以上を対象にした研究では、年齢や性別よりも、マインドフルネス実践が最もこころの状態改善に貢献していました。

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日本は残念ながら、World Happiness Reportによる幸福度では、いつも40位ぐらいです。コロナ発生から5ヶ月経って以降、自殺が増加していることも懸念です。個人主義の強い一部欧米の国では、利己的な行動や指導者の共感の欠如が公衆衛生の足並みを乱し、コロナ死亡者数を増加させている可能性が指摘されています。その点日本は、社会的規律の風土があります。行政レベルや個人レベルで共感や助け合いがさらにしっかりできるといいですね(アメリカで女性知事の州は、その共感力ゆえか、コロナ死亡者数が少ないそうです)。そして、社会の安心感とつながりが、コロナの数字だけでなく、苦境におけるこころの状態や幸福度の改善につながることを願います。

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