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被災地の「こころ」 3

被災された方々と同様、震災支援に赴いた人々もこころのトラウマ (心理的ショック、苦痛) を経験します。


支援者は、ボランティア、自衛隊、警察官、医療者など様々です。

ところで、被災地へ直接赴かなくても、YouTubeやメディアの発達した現代、多くの方が間接的にトラウマを受けうることもわかっています。

6月の派遣地での日記からです。

Image by Kelly Sikkema

6月12日 Day 9

災害時派遣について国境なき医師団などで経験豊富な医療者との対話から。
生死に関わる状況で寝食をともにするチームは非常に 「Deep」 な関係を築くことになる。
いわば、お互いが、「こころのライフライン」 である。 国際的なチームだと激しいやりあいもある。
お互いの良い部分、悪い部分を知っていく 「Extreme Self Journey/Discovery」。
また、自己の限界も知ることになる。 チームあるいはMission に溶け込めず、任期よりはやくかえる人も。
Flexibilityが大事。 行く時期、急性期、慢性期でも違う。
帰国すると、社会にしばらく Fitできない (ランボーやイラク帰還兵をイメージしてください)。
人間関係に影響。 人によっては、支援活動に依存してしまい、また行きたくなる。
この彼女はこのような機会がもてる自分を 「幸運な人生」。 Missionがないときは旅行へいく。
「いつかやろうと思っているのなら、一生できない。」
Mission前に遺書、身辺整理を (私も含めて) 考える人はいる。
到着するまでは未知数で、不安と興奮は高い。 現地にはいってから臨機応変にすること。
あとは自分の普段の能力でできることをやるだけ。

ニューヨークで起きた 911では、支援者のトラウマ、中でも強いトラウマを指す、PTSD (Posttraumatic Stress Disorder) といわれる状態の頻度が報告されています。

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つまり、全体の支援者で12%程度が PTSDと呼ばれる強いトラウマの状態を呈していたということです。 これは 2-3年後での頻度です。 それ以前には、おそらく、より多くの方々がトラウマに苦しまれたことは間違いないでしょう。 多層的に、被災者そして直接支援者、間接的に影響を受けた人々と、こころのケアを提供する視点が必要になります。

こころのケアには様々な方法があります。 基本的な考え方については、こちらを参考にして下さい。
被災地こころのケア 7原則 (ビデオを見る

その一つ、こころのトラウマの治療法、EMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing) を紹介します。 帰還兵、災害時、虐待など様々な形、そして様々な程度のトラウマに対して、その効果が科学的に立証され、広く用いられているものです。 一種のカウンセリングですが、方法は比較的シンプルです。 治療者の指を左右に目で追いかけるというものです (催眠ではありません。 膝をタッピングする場合もあります)。 これにより脳の左右の切り替えが繰り返され、前々回に触れた辛い記憶がストックされている脳の深いところへ達することができ、そこにある記憶を風化させる、あるいはポジティブなものへ変換するというものです。 多くの方は最初、その効果に懐疑的ですが、私も含めて、実際に体験するとそれが起きうることを実感し、驚きます。

私のトラウマは、被災地派遣での経験でした。 上記で触れた支援者の例に洩れず、派遣後、かつての自分になぜか戻れない自分に戸惑っていました (後からそれが派遣によるトラウマのためと気づきました)。 私がトラウマとしてこころにストックしていたイメージは以下のようでした。

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以下は、EMDRが進むと同時に、この映像が私のこころの中で変化していった経過です。

1.被災地、市街地、海の近く、大きな建物が崩壊している。 人は見あたらない。 恐怖。

2.高く、黒い津波が近づいてくる。 逃げ惑う人々。 私は内面で震撼している。

3.避難所で、ある女性から聞いた体験談。 彼女は津波が近づくのを見た。 その中にはトラックが漂っている。 私は感情的に揺さ振られ、こう思う。 「こんなこと起きなくてよかったのに」。

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4.別の出来事が浮かぶ。 女性医師が新聞記事を読んで泣き始める。 記事は、病院の患者を救おうとして苦闘する医師について。

5.最初のイメージである建物は骨組みのみ見える。 その他は消えている。

6.海岸沿いの人々。 波は小さくなっているようだ。 人々を襲っているかは定かでない。

7.人々はどうやら子供達のよう。 前より幸せそうな映像。 波は低くなっていっている。

 

8.ボランティアがいる。 避難所はもう閉まっている。 暗さが柔ぎ、人間の生活が戻ってきている。

9.人々が仕事へ行き、ラッシュアワー、より多くの人々。 より日常生活に近づいている

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10.視界のコーナーには暗い枠組み部分。 一方、明るさと人々のスペースが広がっていっている。

11.明かりが暗い部分を侵食していっている。 境界は曖昧になっていく。

12.最初のイメージは、車がディスク型の机に乗っかったような形に変わっている。 それに付随した感情も特になく、形があるのみ。

13.自分は大丈夫、と感じる。

 

絵に描いたような展開に聞こえますが、実際に私のこころの中で起きた変化です。 この後、随分身体が軽くなったのを憶えています。 こころに関わる全般に言える傾向ですが、自分ではそれが 「こころ」 から来ているつらさ、現象だとは人間気づきにくい。 鍛えられた (自衛官など) 支援者であれば、よりその可能性を排除したいでしょう (弱さととられがちでしょうから)。 何ものにも変えがたい支援という貴重な仕事を提供する彼らに、このような助けはあるのですよ、と伝えたい気持ちです。

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